和田ハルライフ |
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夏休み直前、新太は公園で出会った、夏というのに黒いスーツ姿の探偵伯爵と友達になった。奇矯な言動をとるアールと名のる探偵に新太は興味津々だ。 そんな新太の親友ハリィが夏祭りの夜に、その数日後には、さらに新太の親友ガマが 行方不明に。彼らは新太とともに秘密基地を作った仲間だった。 二つの事件に共通するのは残されたトランプ。そしてついに新太に忍びよる犯人の影。 「かつて子供だったあなたと少年少女のための」と銘打って、豪華執筆陣・豪華装丁で シリーズ刊行されているミステリーランドという大掛かりな企画、の中の一冊。 高いです。でも、全シリーズ揃えたくなる素敵な装丁です。図書館で借りました済みません。 いつもの森テイストは健在ながら、子供にも読みやすい描写は好印象。 子供には子供の読み方が、大人には大人の読み方がちゃんと用意されていて、 その辺りは流石だなと思います。 虫の標本は良くて、犬や猫の標本は何故駄目なのか、 どうして人を殺してはいけないのか。 新太を子供扱いせず、一人の対等な人間として誠実に接する探偵伯爵は、 とても正しく素敵だと思いました。 社会へのメッセージ的なものを作品に込める作家さんでは無いと思っていたので、 意外に盛り込まれたメッセージ性に驚きました。このシリーズならではですね。 正しく読んだ子供達(そして大人達)には、深く響くメッセージだと思います。 相変わらず、ラストのひねりも気の利いてます。 もし自分の子供をもつようになったら、伯爵のように誠実に接したいな。 #
by wadahal
| 2006-10-15 01:16
| 森博嗣
聞いてください。誰にも言えない、私の秘密を。 野沢尚 最後の小説。 閉ざされた部屋に集まった5人の男女が、自らの心の闇を1人ずつ告白し合う 著者の急逝により、この物語は2人目の告白で終わってしまったが、 著者が目指した高みは、読む者の胸に激しく迫る。 巻末に北方謙三氏の弔辞を併録。 読む前に、野沢尚さんが自殺した事が朝のニュースで流れた時に自分が受けた 衝撃を思い出して、今更ながらまた胸がぎゅうとなりました。 『破線のマリス』でこの方の著作と出会って以来、狂ったように既刊を探し回り、 毎日毎日飽かず読み耽っていました。間違いなく、私のベスト3に入る作家です。 2人目の告白までで終わっているので、ハードカバーとしては非常に薄い本です。 その薄さの意味を思って、もう読む前から非常にしんみり。 しかし、この方は人間というものに対して終始容赦の無い書き方をしますね。 人間の暗部に対しての手心を全く加えない描写、これでもかこれでもか、と 深い闇を見せ付けられて、お世辞にも読了して晴々した気分になるとは言えません。 この本でも、読後のやるせなさは相変わらずです。 残り3人の告白と、ラストをどのように締めるつもりだったのかが、とても気になります。 さわりだけ見せて永遠にさようならなんて酷いのです。 併録された北方謙三さんの弔辞、喫茶店で泣きながら読みました。 こんなに慕われて、愛されてたのになぁ。 #
by wadahal
| 2006-10-15 00:56
| 野沢尚
ひょんなことから霊感商法事件に巻き込まれた“何でもやってやろう屋”探偵・成瀬将虎。恋愛あり、活劇ありの物語の行方は?そして炸裂する本格魂。 最初、タイトルから「純愛物か?歌野晶午がまさかなぁ…」と思いました。 内容とは余り合っていない気がします。 色々な意味で、ちょっと期待し過ぎた感じです。 この人らしい叙述トリックや、ラストのどんでん返しは勿論凄いとは思うのですが、 気付く人は中盤くらいでピンと来るかも知れません。私は気付きませんでした。えへ。 そこはかとなく全体から漂う陳腐感・B級感が、個人的には好きになれなかったなぁ。 ラストも、やや尻切れ感有り(勿論意図してのものだと思いますが)。 でも、ミステリ初心者の方や、読みながらあれこれ推理する習慣の無い方には おおっと驚けて良いのでは無いかと思います。ちょっと、分厚いですけどね。 #
by wadahal
| 2006-10-15 00:43
| 歌野晶午
待って待って待ちました。やっと出た!(の割に発売してたの知りませんでした) 「殺してやろう」「死のうかな」「殺したよ」「殺されて仕舞い ました」「俺は人殺しなんだ」「死んだのか」「──自首してください」「死ね ばお終いなのだ」「ひとごろしは報いを受けねばならない」 昭和二十八年夏。江戸川、大磯、平塚と連鎖するかのように毒殺死体が続々と。 警察も手を拱く中、ついにあの男が登場する! 「邪なことをすると──死ぬよ」 余りに間隔が開き過ぎて、前作『 陰摩羅鬼の瑕』の内容も薄ぼんやりとしか 覚えていない有様。それでも関口君がどうしようもなかった事だけは覚えてるんだから 相当酷かったんだろうなぁ、と思う。 というのはさておき、待ちに待った新刊です。 相変わらず枕代わりになりそうな分厚さ。頑張れば人だって殺せそうです。 殺人。 本書には、繋がっていそうで繋がりが見えない人死にがどんどこ出て来ます。 あ、死んだ。また死んだ。え、そっちも死んじゃうの? 各事件に共通するのは、死因が毒であること。一見してそれだけで。 肝心の警察は所轄と確執に分断されて、互いの意思疎通も満足に取れない有様。 いつもの調子とは明らかに異なる榎木津。 何故か今回は妖怪薀蓄をほとんど垂れない京極堂。 前作とは打って変わってちょっぴり背筋の伸びた関口。 お馴染みの妖怪談義やどこまで遡るんだ?とつっこみたくなる 伝承の類の長講釈も、今回はほとんど出て来ません。 その代わりに京極堂が語る、世界と社会と世間についての話は考えさせられるものがあった。 今まで丸呑みにして信じて来たものや育てて来た価値観が、 足元からぐらぐらと崩れて行くような感覚。シリーズで毎回感じる事なんですけどね。 ラストのくだりが好きです。次までに、また2、3年は待たされるのか…。 #
by wadahal
| 2006-10-06 23:49
| 京極夏彦
恩田陸は、『六番目の小夜子』や『ライオンハート』『ネバーランド』などから 日常とファンタジーの折衷小説専門みたいな印象を持っていたので、 こんなドタバタなスラップスティックコメディを描く人だとは予想外でした。 日常の些細な事件が大騒動に発展していくパニックコメディ! 何の繋がりもない見知らぬ者同士が集まる東京駅。誰かと誰かがすれ違うその一瞬に、 運命のドミノが次々と倒れてゆく!! ページを繰る手が軽い軽い。2時間弱で快調に読み終えました。 東京駅を舞台に、27人+1匹が互いに絡み合い、もつれ、ごろんごろん転がって。 こんなに沢山の登場人物が出て来るのに、「えっと、これ誰だったっけ…」 とならない筆力は流石です。 目前に迫る締め切りに焦る、生保会社の職員達。 ネットの俳句仲間に会うために、はるばる上京して来た初老の男性。 恋人との別れ話のために従姉妹をダシに使う青年実業家。 ミステリ連合会の次期幹事長の座を巡って推理合戦を行う高校生達。 ミュージカルのオーディションでライバルの母親に下剤を飲まされる小学生。 そして、駅に爆弾を仕掛けるテロリスト。 それぞれの取った行動が別の登場人物に次々と影響し、伝播して行く。 それはどんどん弾みがついてスピードを増して行き、 後半からクライマックスにかけての秒刻みの場面転換と目まぐるしく変わる視点は、 まさにドミノ倒しのような強烈なスピード感でした。 ラストも粋で余韻があって、読後感も良好。 この物語のようにハイスピードで劇的ではないけれど、 現実でも少なからず誰かの行動が誰かの運命に繋がっていて、 ゆっくりとした速度でパタン、パタン、とドミノが倒れて行ってるのでは無いかなぁ。 と考え、思わず自分が今日取った行動を振り返ってみたりしてしまうのです。 個人的には、生保会社の描写が非常にリアルで(私も同業者なので)、 「そうそう!」と頷いてしまいました。 勿論、和美やえり子や優子みたいな魅力的な同僚は居ませんけども。 #
by wadahal
| 2006-10-06 22:55
| 恩田陸
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